国立新美術館移転は正解「第11回 文化庁メディア芸術祭」受賞作品展

なんだかやっぱり激混み(最終日なんかにいっているのが悪いのですが)でげんなりしながらみました。でも人がたくさんいる状態というのがうれしいのです。みんな、もっと見て!現代アートを、日本のテクノロジーを!

気になった作品を羅列します。

Se Mi Sei Vicino (if you are close to me)
優秀賞の作品。とにかく「雰囲気を図式化する」が面白い。センサーの入った黒光りする台(2m四方くらい)の上にのったパフォーマー。それを囲む2面のスクリーンと2面の観客。同時に4人までがあがってパフォーマーとの間を作ることにより、台より発生する地場を変化させてサウンドとグラフィックを変化させる。そのグラフィックも美しい。なによりも、好奇心を丸だしにしながら、パフォーマーに近づいていく参加者、微動だにしないパフォーマー。その空気感の濃さが、テクノロジーを超えてこちらに訴えかけてくる。
実際に見たことはないのだけれど、オノ・ヨーコの「カットピース」を連想させた。「カットピース」は舞台上に座ったヨーコのきているものを観客がきって持ってかえっていくパフォーマンスだけれど、にたような緊張感を感じた。そこにテクノロジーが介在し、コンテクストを観客に考えさせることなく図式化して見せる、というその形式そのものが現代なんだと感じた。

captive julia
フラクタル集合で描かれた三次元の静止画。もうこれはきれい、としかいいようにない。数学的に描かれながらも貝のようなその形は、複雑な計算が自然の形に近づいていることを身近に感じさせてくれる。応募者が理工学研究科のドクターコースだということも、メデイアアートの広がりと未来を感じさせた。
そしてなにより、会場で嬉々として作品について語る作者の表情がとてもよかった!

BOTECH-art
どうして自然を解析するとこんなにきれいなものができるのだろう。ビニルでつくられたものかと見まがう植物。美しい。
今回は静止画部門がとてもきれいな作品、はっとさせられるものが多く、とてもよかった。

音響書道
スピーカーを仕込んだ下敷きの上で書道をすると、筆の運びの音を拾う。本来は大きな面にダイナミックな書を書く際のパフォーマンスだという。たしかに、筆のかすれる音は心にひびく、人が思わず体をゆらしてしまうようなダイナミックな音だった。今回は半紙に参加者がかく小さなものであったが、ぜひパフォーマンスも見てみたいと思わされた。

このフェステイバルが国立新美術館で行われるようになって、確実に集客力はましたと思う。以前は東京都写真美術館で行われており、ほとんどその手の筋の学生だらけだったから。たとえば今回ならば、横山大観を見に来たおばさんたちが多数見学していた。普通のカップルも数多く、場所を移したことは正解なのだなと思った。
その中で、「先端技術ショーケース’08」をもうけたことの意味は大きいのではなかろうか。今回展示されていたのは4つだったが、センサー技術を利用した光るボール、音声解析によって感情を機械的に音声に付加する技術、音声を解析し、文節に応じてうなずくロボット、光の濃淡に反応させる技術、とその成熟度ではかなりばらつきのあるものであったが、実際に見ている人が手に取って触るものばかりでかなり人気を集めていた。さらに、それらを応用したアートの提案も別のひとたちよってなされており、きっと産業用途がほとんどであろう研究の成果をわかりやすく展示していた。

今、これを見に来ているカップルが数年後に子供をつれてまたきてくれるような展示にかわっていくとうれしいな。あと1ヶ月以上展示して、国際的に人を呼べるようにしてほしい。東京都写真美術館ICCYCAM、仙台メデイアテークなどと共同で何かできたりしないのだろうか?

「第11回 文化庁メディア芸術祭」受賞作品展開催
会場: 国立新美術館
スケジュール: 2008年02月06日 〜 2008年02月17日
住所: 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
電話: 03-5777-8600

文化庁のオフィシャルページ http://plaza.bunka.go.jp/