文字、と触覚、を味わうには反応速度が必要だった「文学の触覚」展

もともとTypeTraceのデモをEngadgetのオフ会(http://d.hatena.ne.jp/saya_fujitani/20071004)で見て気になっていた「divisual」(http://dividual.jp/)を見るのが主目的でした。

さて。

もともと紙媒体が大好きなわたくし。東京都写真美術館、しかも森山朋絵さんがチーフキュレーターということで嬉々として参りました。のわりに最終日になってしまったのですが。
地下の展示室のみでの展開で、展示物自体は少なかったものの、人もあまりおらずじっくりと味わうことができました。
まず。
入り口を入ると左手に参考資料としてNintendoDSの「DS文学全集工作舍の紙型が。紙型は印刷の行程で活字から型をとるものです。さらにそこに材料を敷いて印字するもとの型を作るわけです。つまり、紙型は鏡文字ではないです、普通に読める文字が彫られている。当たり前ながら流麗な活字印刷生み出されるであろう、文字の溝がとてもきれいで、今回一番感動しました。

さらに入ると平野啓一郎+中西泰人の「記憶の告白」がスクリーンに。スクリーンの前においてあるボールを動かすと文字が動きます。あとから資料をみてみると見学者に小学5年生時の記憶を問いかける文章みたいでした。が、文の意味をちゃんと読み取らないと理解できないのに文字が動いてしまうので、結構理解するのが難しかったです。直感的にいけない。動的なものと文字を動かすタイミングというのは難しいものですね。左右のみにしか動かないとかならとらえるのも早そうですが。

そのスクリーンの裏側には、勝手に動くキーボードが。ファーのソファーに座ってコーヒーテーブルの上に置かれたiMacで閲覧する作品を選びます。今回はこれを目的にきました。
キーボードは舞城王太郎がこの作品のために作ったエッセイのような文章をトレースし、スクリーンには対応する文字が映されていきます。何章かにわたる文章は、会期中にかかれていたものでした。
「キーボード入力をトレースする装置」がこの作品の機構なのですが、書いた文字や変換の行程を表示するだけではなく、うち始めるまでに時間がかかると文字が大きくなるというものがあり、これが一番面白かったです。小説家がどのように文章を書いているのかにはとても興味があり、ワープロ・パソコン出現前の人と後の人では書き方が違うのだろうな、というのを漠然と思っていました。しかし。舞城氏の書き方は一文字、一行、かいてはかいては消したり書き出すまで3分以上たったりと、紙に書いているのとそんなに違わないのでは?という感じがしました。実際は違うのでしょうけど。ソファの前のMacには完成稿が表示されていて、目の前で入力されている文章とは全く違うものになっていたりするとかたかたいうキーボードの音と共に、トレースされているプロセスが本当に面白く感じられました。

「然」
という鳥獣戯画から動物の絵をとってアニメーションさせるきれいな映像があったのですが、これも参考展示でした。どこにも鳥獣戯画からきているとはかいてありませんでしたが。。。

「火よ、さわれるの」穂村弘+石井陽子

穂村の詩が円柱のテーブルの上に投影されます。単語ごとに区切られてふわふわと。蚊が一番わかりやすくて、ぶーんって音をたてながらとんでいました。残念ながら自分で光を遮るとどんなインタラクションがでるのかよく理解できませんでした。でももうすこし反応が明らかにでるなら面白かったかも。

「七つの質問」川上弘美+児玉幸子
さて、児玉さんといえば、つまりあの磁性を帯びた液体が立ち上がるように見える作品です。05年だか04年だかにARS ELECTRONICAで見て以来、かなりさまざまなところで見ています。どこで見てもあんまり変化がないのでだんだん飽きてきました。といってしまうのは現代アートヲタの話ですね。
今回は川上弘美さんが設定した質問に、見学者が声を発するとそれに反応して液体が動くというものでした。洗面台という設定で洗面器に黒い液体が満たしてあったのですが・・・声の長さとか音量とかかえてみたんですけど、あんまり変化が見えなくてちょっと残念。質問は公衆の面前で叫ぶには恥ずかしい「今日、あなたは何を食べましたか」とか「あなたの性別を教えてください」とか。もっと籠って自問自答したいような質問でした。

以上、言及していない作品もありますが、感想でした。
全体的に満足感はありましたが言語を視覚化する難しさ、楽しさ、ですね。パラメーターとしての人的行為がいかに数値的にはうすいか、とか。
10年後、メデイア環境がかわったときに同じテーマの展示に期待、でしょうか。

「文学の触覚」展
会場: 東京都写真美術館
スケジュール: 2007年12月15日 〜 2008年02月17日
12月28日(金) 10:00〜18:00、2008年1月2日(水)〜4日(金)年始特別開館 11:00〜18:00。
住所: 〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス
電話: 03-3280-0099 ファックス: 03-3280-0033