歌う吉田美和と戦う中村正人・DREAMSCOMETRUE WONDERLAND 2007最終日

※普段のエントリーとは別版です。個人的な感想と強い思い入れしか書いてありません

 バルーンにつるされ、浮遊する吉田美和*1、最終日は風が強くてアリーナの客席につきそうになっていてハラハラしながら見守った。アリーナ席をぐるっと取り囲む花道を走る吉田美和、各会場で上がった花火…。フルパワーで歌う吉田美和にどきどきしながらCDと同じくらいの質で歌われる歌に心底感動した。ときどきはずす音程にはやきもきしていたが、数百メートルを走りながら観客の近くにきて歌う42歳には何もいえない。「ありがとう、ありがとう」楽曲と歌のパワー、言葉、それらひとつひとつにパワーをもらって帰るライブだった。

 DreamsComeTrue(ドリカム)の4年に1度の盛大なライブツアーが終った。「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2007」(DWL2007)だ。ファンのリクエストに基づく選曲、ライブ会場を遊園地に見立てた演出。アルバムの発売毎のツアーとは一味違う、アーティスト自ら「エンターテインメント」と公言するツアーだ。「LOVELOVELOVE」発売後の人気絶頂期の1995年に行われた「史上最強の移動遊園地 DreamsComeTrueWonderLand 1995」は全国で50万人を動員し、更地に円形の回るステージを組んだことからも話題になった。ビデオの出来もよく、ドリカム史上最高のツアーだったと言うファンが多い。

 2007年は8月4日から9月23日まで、札幌ドーム、ヤフードーム(福岡)、名古屋ドーム、京セラドームとさぬき市野外音楽広場テアトロン、つがる地球村 野外円形劇場、そして国立霞ヶ丘競技場で行われた。11公演での総動員数は45万人。最終会場となった東京の国立競技場では1日6万人のファンが集まった。

■ファンは確実に変化している、ドリカムも

 「やさしいキスをして」イントロで会場が沸く。2004年発売のこの最近の曲で観客が沸くのは、ドリカムのファン層にも新たな世代が加わったということだろう。*2古くからのファンは最近のツアーで聞いているのでそこまで感動しない。98年ごろからアリーナクラスでさえチケットが売れ残っていたドリカムが、今回45万人動員できたことがここ最近のファンの増加、変化を表している。
 そこまで有名な曲でもないが、ドリカム自身が「ドリファンク」と呼ぶ一連の力強い曲が一気に演奏され、「SUNSHINE」から「あなたに会いたくて」までを踊りとおす。「あなたに会いたくて」はデビュー曲だ。このファンの中で、デビューアルバムを聞き込んでいない人がどれくらいいるのだろうか。3人だった時代のドリカムのコンサートにいったことがある人はどれくらい居るのだろう。
 本編の最後、花火の前に歌われる「あの夏の花火」。今はドリカムではない西川隆宏が主メロディを書いた曲で、前週に裁判傍聴エッセイを読んでいた私は薬物所持で捕まった彼を思い出していた。そしてこの曲を歌う吉田美和を一緒に見た過去に私が大好きだったひとたちも。4年に一度と決められたこのコンサートは人生の半分以上をドリカムの音楽と共にすごしてきたわたしにとって、それまでの自分を振り返り、この先の糧とするものだ。

■忘れない、明日の夢のためにこの日を

 私はこの12年間の間に、8回引っ越してきた。その間ずっと持ち歩いている本がある。「UN-FORGETTABLE THE DAYS OF DREAMS COME TRUE WONDERLAND'95 WE ARE WONDERLANDERS!!!」(1995年11月21日発売、ソニー・マガジンズ)だ。95年のDWLの記録本、ドリカムをはじめとするDWL95 関係者のロングインタビューは何度も何度も繰り返し読みすぎていて、紙がばらけている。私は95年のワンダーランドには行けなかった。ビデオを買って、「UN-FORGETTABLE」を買って、古本屋でライブレポートの載った雑誌を買って…。臨場感あふれるレポート、アーティストとそれを囲む人々がしのぎを削ってライブを作り上げる様を熱意にあかせて必死にむさぼるように読んだ。数ヶ月もたてばまるでライブに参加したような気分になっていた。

 やっと参加できた。

 今回のDWLはこの思いが強い。95年のワンダーランドに匹敵するライブに参加できたことをとても嬉しく思う。

 札幌の初日では中村正人*3がかなり必死の形相でベースに取り組んでいた。95年の「UN-FORGETTABLE」でも述べられているとおり、彼はフロントマンでもなく、バックバンドでもない。今回も佐藤博音楽監督に迎え、自身のプレイに集中できるはずだったとはいえやはり彼はドリカムの一員なのだ。バンドメンバーに指示をだし、自分のプレイをし、吉田美和のフォローをする。ドリカムのプロデューサーとして、準備段階でも相当交渉の場面で自ら悩んできているはずだ。そしてなにより、今年はブログ*4を毎日書いている。ファンの反応を毎日直接見ており*5、かなりの精神的プレッシャーになっていたことだろう。わたしはツアー初日のアリーナ席から数メートルの距離で見た全然笑わない中村正人を忘れられない。札幌2日目のファンクラブ限定公演では、運営体制のまずさから開演の遅れ、それに伴うライブ内容のぐだぐだ感が出てしまい、ファンからはかなりの文句が出た。すべりまくるギャグを繰り出しながら真面目にドリカムという仕事と対峙する中村正人の存在感を改めて感じた。

 是非今回のワンダーランドでも詳細な記録本を出版して欲しい。実現するべき夢に向って現実を組み立てる作業、他人と戦いなだめて前に進む様を見せてほしい。何度も開いては元気をもらうから。


――末田健氏のご冥福をお祈りいたします。
*6

*1:中村正人のブログにてhttp://blog.dctgarden.com/2007/09/30/2007930.html吉田美和のパートナーである末田健氏が亡くなられたという報告が9月30日、あった。国立競技場の公演が終わった3日後、9月26日のことであったそうだ。病死とのことでツアー開始と前後して容態が悪化していたらしい。吉田美和と結婚したのが04年5月。短い結婚生活であったと思う。ツアー最終日まで力強く歌いきった吉田美和に最大の敬意を。末田氏のご冥福をお祈りしたい、心から。

*2:ところで、映画「未来予想図〜アイシテルノサイン〜」はかなりひどいプロモーションをとっていると思う。映画内タイアップが多く、PVを見ているだけでひいてしまった。物語に没入できない。主題歌のPVは是非通常バージョンも作ってほしい

*3:1番の脚注にも書いたとおり、末田氏の件の報告をもって中村正人のブログがストップした。9月30日のことだ。10月1日は彼の誕生日。中村正人が世界に存在することには大きな大きな感謝をささげる。おめでとう、まささん

*4:ドリブログhttp://blog.dctgarden.com/

*5:TBが打てる。しかしこのエントリーは拒否された模様。がっくし。西川さんのこと書いたから?ドリに向けたドリバンザイなブログばっかりで普段は全然TB先には読みに行かない。普段からそんな選定基準なのかな…

*6:ツアーメンバーにも知らされていなかったようだ。ブログへのリンクをいれておく。Saxの本間将人さん:http://masatogtr.exblog.jp/6460824/、バッキングボーカルのGATZさん:http://tkb.gats.tv/?eid=586527